【コーヒー豆の保存方法】焙煎後においしく変化する”エイジング”とは?科学的な事実を基に実験

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焙煎直後のコーヒー豆からは多くの二酸化炭素を含むガスが放出され、

お湯を注いだ際にコーヒー粉とお湯の接触を阻害する要因となります。

そのため、焙煎直後のコーヒー豆は、成分を十分に抽出しづらい状態といえます。

また、やや焦げたような味のコーヒーになることもあります。

焙煎したてのコーヒーも独特のおいしさとして楽しめますが、

数日~4週間ほどエイジングしてガスの放出を落ち着かせることで、豆本来の味を出しやすくなります。

これがコーヒー豆のエイジングが必要とされる理由です。

 

しかし、焙煎豆は大気成分との化学反応によって劣化してしまいます。

そこで、

どのような保存状態でエイジングするのが好ましいのか?

を明らかにすべく、科学的な知見を基に実験しました。

その結果、コーヒー豆の保存には以下の方法が適していることがわかりました。

  • 最も劣化が少ない:アルミ蒸着袋+真空引き+常温保管
  • 実用的:ガラス密閉瓶+乾燥剤+常温保管

本記事では、検証した内容を解説していきます!

使用したガラス密閉瓶

使用した食品用乾燥剤シリカゲル

目次

コーヒー豆の劣化に関する基礎知識

試したエイジング方法の意味をご理解いただくため、

まずは前提となるコーヒー豆の劣化に関する基礎知識をまとめます。

結論、

  • コーヒー焙煎豆は水分との化学反応で大きく劣化する
  • 吸湿対策になるであろう保存方法でエイジングを行った

という内容です。

それだけ抑えておけば読み進められるので、

早く結果が知りたい!という場合は試したエイジング方法を早速読んでいただいてもOKです。

エイジングの目的・必要性

コーヒーの焙煎豆をエイジングする目的は、

焙煎豆からある程度のガスを抜くこと

です。

お湯を注いだ時のガスの発生を少なくでき、

成分を効率よく抽出できるようになります。

また、ガスを抜きすぎても香りが弱くなってしまうので、

数日~4週間ほどの期間でのエイジングを想定します。

コーヒー豆を保存することによる劣化要因

以下の書籍を参考にし、注意点をまとめます。

旦部幸博、『コーヒーの科学』 p.196-199、講談社、2016

コーヒー焙煎豆では経時劣化として、

  • 酸敗
  • ステイリング

が起こります。

酸敗とはいわゆる酸化のことですが、

味の違いがわかるくらいになるまでに常温7~8週間ほどかかるとされていますので、

エイジングにおいてはあまり気にしなくてもよさそうです。

酸敗についての詳細

油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けると不飽和度の高い脂肪酸になり、それがさらに酸化されると低級脂肪酸に分解され、酸敗臭とpHの低下をもたらす。

次にステイリングは、水分と反応して進む劣化で、

常温1~2日で違いがわかるほどに変化します。

したがって、数日~4週間ほどのエイジング期間に対して、

ステイリングは最も注意すべき劣化といえます。

ステイリングについての詳細

焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンが加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、pHが低下してすっぱくなることを言う。

コーヒー豆の保存容器別エイジング実験方法

ガラス密閉瓶、アルミ蒸着袋、1wayバルブ付き袋の写真

吸湿対策になるであろう下記のような条件で焙煎豆を保存し、エイジングを行いました。

試した保存容器

保存容器乾燥剤真空引き保管方法
ガラス密閉瓶有り無し常温、暗所
アルミ蒸着袋無し有り常温、暗所
アルミ蒸着袋無し有り低温、暗所
1wayバルブ付き袋無し無し常温、暗所
※常温は約27℃、低温は約6℃

焙煎後1時間ほど大気中に焙煎豆を静置し、各保存容器に50gずつ焙煎豆を詰めました。

保管場所は光による劣化の影響を除外するため、すべて暗所としました。

なお、使用した豆は、フルシティローストにしたグアテマラ産コーヒー焙煎豆です。

エイジング期間はすべて1週間としました。

ここからは、各保存容器の詳細を紹介します。

ガラス密閉瓶

ガラス密閉瓶にコーヒー豆を詰めた写真

もっとも手間なく保管できる条件と思います。

ソーダガラス密閉瓶 750mlを用い、

エイジング中、ガラス密閉瓶の中に残っている水分が影響しないよう、

蓋に食品用乾燥剤シリカゲル ドライナウ5gを貼り付けました。

ガラス密閉瓶

食品用乾燥剤シリカゲル

アルミ蒸着袋

アルミ蒸着袋の写真

エイジング中に大気成分が入りづらいアルミ袋を用意しました。

袋内の水分を含む大気成分を徹底的に排除してエイジングするため、

焙煎豆を入れた後に真空引きして保管しました。

水分を含む大気成分をなるべく排除するため、

焙煎豆を入れた後に真空引きして保管しました。

真空シーラーはフードシールド製JP290を使用しました。

最大到達真空度は、カタログ値で大気圧-80kPaと、業務用でも使える優れものです。

アルミ袋については、常温と低温の2種類でエイジングを行いました。

アルミ蒸着袋の一例

使用した真空シーラー

1wayバルブ付き袋

1wawyバルブ付き袋の写真

1wayバルブとは、一方向にしか空気を通さないの弁のことです。

焙煎したての豆はガスを放出するので、袋が破裂しないようにするためについています。

新鮮な焙煎豆を売りにしているお店でよく使われる袋です。

この袋の条件では、焙煎豆の袋詰め後に大気成分をなるべく押し出し、熱シールのみ行いました。

熱シールには、アルミ袋と同様にフードシールド製JP290を使用しました。

1wayバルブ付き袋の一例

保存、エイジングしたコーヒー豆の抽出、評価の方法

エアロプレス抽出中の写真

1週間エイジングした後、以下の方法にて抽出しました。

抽出方法

  • 豆量:13g
  • グラインダー:カリタ製ナイスカットミル、ダイヤル6.5
  • 抽出器具:エアロプレス(サンプル間のブレを少なくするため)
    ※インバート式にて80℃のお湯100ml注いで60秒静置し、20秒かけてプレス抽出

グラスは全サンプル統一し、Libbey Duratuffを使用しました。

試飲前にグラスをシャッフルして条件がわからないようにし、香味の確認を行いました。

保存、エイジングしたコーヒー豆の評価結果

濃いめに入れたベトナムコーヒー

前提として、1週間のエイジング期間ではどの条件もおいしくいただけました。

しかし、条件ごとに以下のような差が感じられました。

保存容器香り
ガラス密閉瓶やや弱いやや渋みを感じるが許容できる
アルミ蒸着袋(常温)強いクリアで欠点を感じづらい
アルミ蒸着袋(低温)強いクリアだがやや甘みが弱い?
1wayバルブ付き袋やや弱い①よりもやや強い渋み

最も印象が良かったのは、②アルミ蒸着袋(常温)でした。

香りが強く味もクリアで欠点を感じづらいかったです。

次に③アルミ蒸着袋(低温)も②と同様に良い印象でしたが、若干甘みが弱く感じました。

低温でエイジングする利点はあまりなかったと感じました。

 

次に、①ガラス密閉瓶④1wayバルブ付き袋については、

真空引きしたアルミ蒸着袋比較すると、

香りがやや弱く後味に若干の渋味(すっきり目の紅茶や赤ワインを飲んだ後、舌の上に残るような感じ)

を感じましたが、①については許容範囲と思いました。

特に④の方が①よりもややネガティブな味がある印象でした。

コーヒー豆の保存、エイジング方法まとめ

コーヒー焙煎豆の保存、エイジング方法は、

アルミ蒸着袋を真空引きした状態で常温保管することがベターである

ということがわかりました。

真空引きによって、袋内に残る大気成分を少なくできたことが、良い影響を与えたのではと考えています。

真空引きでガスの抜けが早くなり、香りが弱くなるのではと心配していましたが、そのようなことはありませんでした。

 

しかし、焙煎後の香味の変化を日々楽しむ場合は、真空引きは適していないと思います。

そのため、オススメのコーヒー豆の保存方法は

蓋に乾燥剤を貼り付けた密閉容器での保管

であると考えています。実際、私もこの方法でコーヒー豆を保管しています。

逆に1wayバルブ付き袋での保管は、劣化がやや早い可能性があるので注意が必要です。

使用したガラス密閉瓶

使用した食品用乾燥剤シリカゲル

コーヒー焙煎豆のエイジングや日々の保管のため、

今回の結果を参考にしていただければと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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